アメリカ犯罪史上初の女性連続殺人犯アイリーンをシャーリーズ・セロンが別人かと思うような役作りで演じている。
体重を13キロも増量し、眉毛も抜いて挑んだ。
最底辺の娼婦稼業に疲れ自殺も考えていたアイリーンは、最後の5ドルを使うために入ったバーで少女セルビー(クイスティーナ・リッチ)と出会う。
セルビーも同性愛として社会から疎外され、父親から抑圧されている。
文無しのアイリーンは、次の夜の再会のために客を取るが瀕死の暴力を受け、殺してしまう。
殺した男の金で二人は一緒に暮らし始めるが、生活の糧はアイリーンの仕事しかない。彼女の仕事は娼婦ではなく強盗殺人になっていく。
美人女優の面影すらない汚れ役メイクでセロンが圧倒的。対するリッチも不安定で矛盾に満ちた10代の少女を演じきっている。
「モンスター」はアイリーンにつけられたあだ名らしいが、人を愛し堅気に生きることを希求しながらも、破滅へと突き進んでいくアイリーンの生涯になんと言ってよいかわからない。モンスター=人間でない者と切り捨てられればいいのだが、彼女も人間で、善く生きることを望んでいた。
パティ・ジェンキンズ監督とセロンはアイリーン本人にコンタクトをとりつづけ、死刑執行前夜に本人の了解を得て映画化した由。
本当にズシリと重たい映画だ。
だがシャーリーズ・セロンの鬼気迫る演技はアカデミー賞受賞も納得。
私の様にただ映画を娯楽として見たくない人は必見だと思う。