透華さんのブログ(106)
透華(29)
和歌山・ツンデレ系

アザーズ

20/12/10 05:18
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何の予備知識もないままかなり昔に観た作品である。

母子3人で大邸宅に暮らす者たちの元へ、ある日3人の新しい使用人が雇われる。まもなく起こる邸内の怪奇現象…近くにいるはずなのに見えない何者かの正体とは…? 

ゴシックな雰囲気漂う静かなホラーとして、とても緻密に作られた作品だと思う。
ホラーなのに、しかも舞台は如何にもお化け屋敷的なものであるのに、ホラーの定番である「脅かし」の要素が表出してこないのは見事な演出だと言っていいものだろうと。

日光アレルギーの子供たちのため、暗闇に包まれる邸内、必ず来た扉の鍵を閉めてから次の部屋の扉を開けること、というルール、戦争に行ったまま帰ってこない父親…、といった奇妙な要素から、じわじわと浮かび上がってくる違和感。
イギリス映画のにおいがプンプンと漂っているゴシック・ロマン。
怖がらせる映画というのは掃いて捨てるほどあるが、美しい恐怖映画というのはほんのわずか。この作品はそのひとつであり、恐怖は常に美の衣装
をまとっているという感じ。

とにかくニコール・キッドマンの美しさがきわだった映画で、彼女の演技には魅了されっぱなしだった。
当時ニコールがインタビューでトムとの結婚生活について、真っ暗だった。それにすごく孤独だったと語っており、この作品の主人公ニコールと重なってしまうのである。(製作が元旦那のトム)

この作品の魅力は、何といっても二コール・キッドマンの凛としたというべきか、ある種ヒステリックな演技が作品全体の緊張感を持続させ、執事たちの抑えた演技がそれを威嚇するようでもあるところと、霧がかかった洋館が英国のクラッシックホラーを彷彿させる何ともいえない雰囲気を醸し出しているところだ(ある意味スタッフの力と出演者の演技力の勝利)
それでもやはり、ラストの二転三転する、どんでん返し的な展開には思わずなるほどと唸ってしまうものがあり、他の作品と比べたくないところでもある。

この作品が、イギリスでなくスペインで撮影されたというところだけでも驚きに値するが、作品全体の重厚な雰囲気とひとひねりした展開、キッドマンの演技は一見に値すると思う。

ラストはとてつもない衝撃で哀しくもあり間違いなく秀作である。
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