恐る恐るページをめくる様な作品。
最初は恐怖が静かに、じっと横たわっている感じがする。
しかし間もなく、その様子は一変する。
珍しい症例と紹介された男性患者。
その異様な光景を目の当たりにしたカーラ。
精神科医として俄には信じられない彼女は、
彼の中の別人格が語る話や記憶を辿ることに。
でもそれが恐怖の始まり、触れてはいけない扉を一つまた一つと開き、
そして誰もが忘れ去った、埋もれた過去に辿り着く。
どんよりとした空の下、そんな雰囲気の物語が進行する。
医者として科学的根拠のない物を、どう理解し受け入れて行くのか。
謎の死を遂げた人達は何故選ばれたのか？その共通点は？
実は、とても丁寧に作られた作品、物語なのだ。
カーラの下す診断で、犯罪者が死刑判決になることも。
そんな彼女の“良心”を支えているのも、
夫が暴漢に殺害された時の支えも、深く揺るぎない信仰の心。しかしそんなカーラが、恐怖と絶望の淵に突き落とされて行く。
よりにもよって信仰とは無縁な、帰る場所を失った不浄な魂に…