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透華(29)
和歌山・ツンデレ系

ダークナイト

23/5/20 22:06
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ヒース・レジャー様の黒い狂気が戦慄の歴史的名作
本作の存在がノーラン監督版バットマン・シリーズを「ダークナイト・トリロジー」として映画史に遺すべき傑作シリーズに引き上げたと言える。
主人公よりも悪役の印象の方が強い作品は稀だが、共通する理由は“現代における狂気”を体現する存在であり、権力や資本等の社会取引が全く通じない事こそ“悪魔”の旋律なのだ。
嫉妬や憎悪、恐怖や独占欲など、人類の大罪を封じるために歴史が造り上げた社会秩序や法治をことごとく破壊し、人々を相互不信の暗闇に引き戻す狂気の悪魔、人類文明の否定が“ジョーカー”の核心だ。
ヒース・レジャーが怪演したジョーカーは、これまで見た生身の人間の悪役の中で最凶の犯罪者だろう。
高度知能と心理操作術により計算された行動は常に警察の上を行き、誰にも止められない。異様な恐怖を脳裏に焼き付ける現代のモンスターを産み出した本作は、全編がナイフの如く鋭利で美しい。
その黒い狂気と対峙するには、黒い正義しか無い。法的手続きにより後手に回る白い正義が機能しないのなら、黒は更に濃い黒で止める。もはやゴッサム・シティは光の騎士ハービー・デントの出る幕をとうに過ぎた狂気の戦場なのだと訴える。
現代社会でも紛争が続く国や地域があるが、憎悪に駆り立てられた人間同士の戦いは、まさにジョーカーとの終わりのない戦いそのものだから、それに理性を失った文明が屈する事が観客にとって最も恐ろしいのだ。
その点では影の主役であるゴッサム市警ゴードン捜査官の判断への賛否こそ我々が問われている。
前作からレイチェル役が交代した点を除けば、バットマンとフォックス社長による最新装備も良く練られており、圧倒的な破壊と狂気のリアリズムとの闘いに誰もが震撼する非の打ち所がない怪作。
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