透華さんのブログ(106)
透華(29)
和歌山・ツンデレ系

マッチスティック・メン

20/3/29 23:40
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脚本が素晴らしい。
一分の隙もない構成に見事な台詞。
騙されないぞと構えるより、ここはリラックス。
鮮やかなお手並みに惑わされて、自分を笑い飛ばすのが相応しい。これはコメディなのだから。

 軽くてスマート。その上ちょっといい話。洗練されているけれど、温かく、パンチもある。
巨匠が気分転換に撮った小品で、スタッフ、キャストは超一流。皆が楽しんで創り、観る人も楽しい。そういう作品。

 異常な潔癖と広場恐怖症に悩む中年男が、生まれてからずっとほったらかしにしていた実の娘と知り合う。そして彼女との交流を通して、人生を取り戻していく。

自分のことさえ手に負えない人間が、わが子可愛さに奮闘する姿は感動的。
同時に可笑しくて笑ってしまう。

この人物は詐欺師である。といっても、銃を使ったり、無理やり金を奪ったりはしない。
相手の欲を利用して、同意の上で頂戴する。
娘に汚い言葉を使わせず、モラルを説くような善人なのだ。そんな憎めない主人公にニコラス・ケイジ様。
この名優を凌ぐ魅力ある娘を、アリソン・ローマンが演じる。
はちきれんばかりの笑顔としたたかさ。
どこででもやっていけるタイプだろう。
彼女は利口で、世間知らずではない。
反面、14歳の少女らしい柔らかで、無垢な心を持っている。父親の仕事にも寛大な理解を示す。
生意気な口を叩きつつ、親から愛されることを望んでいるのだ。
こんな愛しい存在を前にすれば、親父はもうメロメロ。
この小悪魔は、妻と別れて以来、14年間他人に対して閉ざしていた領域にズカズカ踏み込んでくる。
彼は当惑しながらもそれを受け入れ、かつてない幸せを感じる。愛し愛される喜び。
二人のやりとりが面白くて、何回観ても飽きない。それどころか、観るほどに心境が分かり、味わいは深まる。

 軽快なテンポで瞬く間に進み、あっと驚く結末で幕切れ。こんな映画をもっと観たい。

大ファンの久々のサム・ロックウェル様が超かっこいいのも嬉しい!
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