透華さんのブログ(106)
透華(29)
和歌山・ツンデレ系

ラストキングオブスコットランド

20/4/25 21:01
682 1
時代は七十年代。「若者の反乱」の時代に、父の職を継ぐべく医大を卒業した主人公は気まぐれにウガンダを訪れる。自分探しの旅だ。手軽に下半身を満たしてくれる現地人の女の子にも会えて幸先の良い道中になる。

しかしいったん僻地医者になってみれば、毎日が地味でつまらない。同僚の奥さんに手を出そうとして拒まれるし。
そんな時にひょんなことからアミン大統領と出会い、スコットランド人というだけで気に入られる。
本国でならほんの見習い医師の青年が突然権力に近くなる。わくわくする。しかし…、という話。

アミンと彼の絆は「反英意識」がきっかけとなるのだが、アミンの英国憎しが経験に由来する臓腑の感覚なのに比べて、主人公のそれは流行に乗った反権力意識でしかない。
ウガンダで策動する英国大使館職員(「汚い大人」の象徴)に対して喧嘩腰の態度を取る主人公は得意満面だ。青春ってこっ恥ずかしい、の普遍的な姿がここにある。
アフリカもウガンダも「オレの青春の彩り」くらいに思っていた青年が、後半に入って次々と現実のしっぺ返しを受けていくあたり、恐ろしくもあるのだが、何気にカタルシスもある。ダークな道徳劇としてかなり力強い話だ。

フォレスト・ウィテカーの巨躯の横で主人公は小柄で唇は真っ赤で、まるで女の子のように見える。おそらく監督はわざと二人の力関係に同性愛的な匂いを持たせている。フォレスト・ウィテカーばかりが注目されたが、この医師役の若手俳優さん(こちらが大好きなマカヴォイたん!)も物凄く上手い。

それにしても、終盤の残酷映像は貧血モノだった。主人公の「若さ故のバカさ」があれほどの罰を受けることなのかと慄然とする。しかし原因と結果の非対称性というのもまた現実世界の残酷さだということなのだろう。

素晴らしい映画だが、残酷シーンが嫌いな方は避けた方が良い。
(c)tel2.tv