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和歌山・ツンデレ系

インファナル・アフェア3

19/8/17 00:44
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10年という長い時間で展開された壮絶な三部作の、本作はいよいよ完結編です。

一般的にシリーズ物は同じような話が繰り返されて、続編毎につまらなくなるものが多いのですが、その意味で本三部作のように、三作全てが面白く、全てで映画のタイプが異なる物は非常に珍しいと思います。

本三部作では、1作目はスパイ映画、2作目はマフィアと警察の対決を描いた群像劇として描かれましたが、最終作である本作は、このシリーズの唯一の生き残りであり、最も罪深い男であるラウが、無間地獄へと落ちていく物語です。

こう書くといかにもアンディ・ラウの映画と思われがちですが、実際にはトニー・レオン演じるヤンの登場時間はラウより遥かに長い。
既に死者となっている設定のヤンの登場時間がやや長すぎるようにも思えますが、ヤンが最後の恋に落ちる女性であるリー医師や、後に友情を築く事になる男たちとの運命的な出会いを描く事で、悲惨な死に方をしたヤンに対して本作で少し救いを持たせているように思えました。
反面、ヤンの幸福な時間を自分に重ねて運命を変えようとしつつも、最後まで救われる事のないラウが少し気の毒にも思えます。最後の最後まで悪の世界との関係を断ち切らず、おまけに自分の悪事を揉み消すためにさらに多くの人を殺してきた事を考えれば、自業自得ではあるのですが。
ケリー・チャン演じる知的で優しいリー医師や、友達のためにボスに歯向かうキョン、父親らしい温和さを帯びたウォン警視、前作とは一転して人間不信の塊に成り果てたサム、さらには新しく登場するヨンやシェンなど、主役以外の登場人物の描き方も上手い。
前作までの頭脳戦が殆どないため、緊迫感は落ちますが、本作もまた、過酷な運命に翻弄されながらも抗し続けた人たちの姿が心に残る、優れた人間ドラマに仕上がっています。
香港でも世界全体で見ても、本三部作は類稀な完成度を持つシリーズ物だと思います。


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